2001年年末、「INOKI BOM-BA-YE 2001」に出場することになった永田裕志選手。
「個人的に好きな永田裕志」の2つ目は、この「プロレス界が地に落ちた2つの試合」
です。
永田裕志VSミルコ・クロコップ
「K-1軍VS猪木軍」として、以前から遺恨のあった対決でしたが、
藤田和之選手や小川直也選手ら「真正・猪木軍」である2人は欠場。
藤田選手はケガによりものであったが、小川選手は内部不和等により、オファーを断ったとされています。
難航する選手集め。果ては、K-1の創成期にその人気の中心を担っていた佐竹雅昭選手が猪木軍として出場するなど、猪木サイドの苦しさが如実にでていたことは確かでした。
そんな中、新日本プロレスから永田裕志選手と石沢常光(ケンドー・カシン)選手が出場しました。
レスリングエリート、G1クライマックス優勝者、新日本で今最も強い男
そういった触れ込みで、宿敵・ミルコ・クロコップ選手との大一番に臨んだ永田裕志選手。
しかし、結果は、1R21秒、ミルコの左ハイキックでダウン、からのパウンドによるTKO負け。
試合後の永田の表情は「笑顔」だった。
当時のテレビ解説では「脳震とうで何が起きたかわかっていないんでしょう」
と言われていたが、
「これで負けになるの?」という表情にみえました。
プロレスだったらここからが勝負、というタイミングでストップがかかったことへの疑問。
その思いがあふれ出した故の「笑顔」。
永田裕志VSエメリヤーエンコ・ヒョードル
2003年には、最強のロシア人ファイターとして、リングスのチャンピオンになり、PRIDEの王者にまで君臨した、エメリヤーエンコ・ヒョードル選手とも対戦しました。
これも惨敗。
試合内容は、組もうとする永田選手に対し、これを嫌がったヒョードルが打撃でけん制。
永田選手の蹴りをガードし、放った右ストレートが顔面に入りダウン。
足をとろうとする永田に対し、あくまでグラウンドには付き合わんとばかりに、足を抜くヒョードル。
立ち上がり距離をとる永田選手であったが、ヒョードルに背を向ける格好になり、これを逃さなかったヒョードルがコーナーへ追い詰め、左ミドル。
更に、ロープ際での組み合いから、ヒョードルが必殺のロシアンフック。
これがクリーンヒットし、ダウンした永田選手の頭部へのパンチ、腹部へのサッカーボールキック、そしてパウンドパンチでTKO。
惨敗。
この言葉以外に表現する言葉はありませんでした。
この試合に関しては、かなりのいわくつきでああったことが、後のインタビューや証言で判明しています。
永田裕志選手は、このヒョードル戦を、試合の前日に言われ、
しかも、この試合でのファイトマネーを貰えていなかったという。
しかし、この事情を知らないプロレスファンやマスコミは、
新日本プロレス、いやプロレスを背負うものとして、「プロレスを地に落とした」
”戦犯”として永田裕志をバッシングの的にしました。
スゲー悔しかった。
永田選手が負けたことも悔しかったし、当時は、桜庭和志選手の活躍などもあって、
「プロレスラーは強い」と思っていた時期だったので、
”プロレスは本当は強くないんじゃないか?”
と疑問を持つ自分にも悔しかった。
「プロレス最強説」なんて、もはや誰も思わない時代になったのでしょうが、
昭和からのファンや、90年代や2000年代初頭の頃のファンなら、誰もが
「最強」を信じて疑わなかった時期があると思います。
が、それ以上に悔しかったのは、学校で永田選手のことをバカにする奴らに何も言い返せなかったことです。
ミルコなんてたまたま蹴りがヒットしただけだし、プロレスラーはそこから反撃するんだから、止めたレフェリーが悪い、みたいなことを本気で説いていました。
永田裕志は会社への不信感を抱いていた?
今になって思う事ですが、IWGPヘビー級チャンピオンとして、V10を達成し、
その後、高山善廣選手にベルトを奪われました。
そして、年末のヒョードル戦。
しかも前日に決定され、ろくに対策もできずに臨んで敗北。
プロレスファンからはバッシングの嵐。
しかも、ノーギャラ。
IWGPヘビー級の防衛記録を更新した人に対する仕打ちはコレなのか?と思わざるを得ません。
ボクだったら、
「人間不信」
そう書いた辞職願いを書いて、社長室の机にそっと置いて出ていくでしょう・・・
「永田裕志は華がない」
華がなかったから、新日本プロレスは低迷したんだ。
そういう声をよく聞きます。
ボクもそう思います。だけど好きだった。
「永田裕志は”強さ”を求めているんだ!だから華なんて関係ない!」
当時ボクは本当にそう思っていました。
でも、少しずつ、「違うのかな?」とも思い出していた時期でもあります。
この時期が「個人的に好きな永田裕志」である理由。
それは、「強さってなんだ?」と本気で考えさせられたからです。
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